家柄や地位や、金銭、見栄え。 そんなものじゃなく、彼女はいつだって、俺自身を見ようとしてくれた。 知ろうとしてくれているのを感じる程、彼女への想いが増した。 閉じ込めてしまいたいくらい、愛おしくて堪らなくて。 けれど、悲しい顔を見たくなくて。 笑っていて欲しくて。 どうしてか、うまく伝わらない。 ただ、隣にいて欲しいだけなのに。 こんなにも惑うのは初めてだった。 妻も既に数人いて、遊び相手にだって事欠いたことはない。 好ましいと思うのも、恋をするのも、数多あることだというのに。 こんなに、相手の心が気になるのは、初めてだった。 本当だよ。 君は信じてくれるかな。 初めて、大切にしたいと思った恋の相手は、君なんだ。