友達は恋人未満か否か

青薔薇のペンダント。
そっと触れるたび、脳裏に浮かぶ彼の声。

 ―あなたのことが、好きなんです―

優しい笑顔と優しい言葉。
その直前まで、友達だった。

友達だと思っている間は、恋人未満じゃないと思う。
でも、告白されたその瞬間から、友達と恋人未満がイコールになる。

「……焔くん」

この世界に対する恐怖や不安で、泣きそうになると、彼の名前を呟くのが癖になった。
そうして、記憶の中から私を呼ぶ声を思い出す。

 ―先輩―

陽だまりか、はちみつみたいな。
微笑みの面影に縋って、なんとか今を耐えている。


すごく似ているけど、でも、あの人からは冷たい印象しか受けなくて。
怖くて、苦しくて、辛くて、痛くて、なのに顔立ちはそっくりなのが、嫌だった。

だから、ベッドに潜ってペンダントに縋る。

私を好きだと言ってくれた、優しい焔くん。
すぐに返事できなかった所為で、恋人未満の友達のまま。

人間界を思うほど、浮かぶのは彼のことばかり。

「……焔くん」

こんな状況になって、ようやく理解できた。
逃げてる訳じゃない。


両親より、他の友達より。
あの世界に残した気がかりは。


「返事、したいよ……焔くん」

友達なのに。
好きって気持ちがあると、恋人未満になるんだね。

「はじめて知ったよ……もう、遅いかな…………」

焔くん。



泣きながら、名前を呼んだその声に。
扉の向こうで答えた、誰か。

「先輩」