甘酸っぱいセンチメンタル

二人分の重みに耐えかねて、ベッドがぎしりと不満を零した。
けれど、当の二人にはささやか過ぎて聞こえていない。

褐色の肌に乳白色の肌を重ねる様は、まるでカフェオレのよう。
甘く、甘く溶け合って。
そして二人で眠りに落ちる。


夢よりも、夢のような現実。

気だるい目覚めに、くるみは微笑んだ。
隣に横たわる愛しい人は、あどけない顔で眠っている。
頬をつつくと、嫌がって顔を枕に埋めてしまう。
そんな些細なことが、幸せで涙が零れた。

「んん……ん〜?」

ぼんやりしながら、リュカが金色の瞳にくるみの顔を映す。
寝起きの悪い彼に、くるみは涙を拭って笑いかけた。

「おはよう、リュカ」
「おはよ〜」

無邪気に笑い、啄ばむような口付けを交わす。
今は当たり前のその行為が嬉しくて、笑みが零れた。

「え? え?? ど、どうしたの〜。どこか痛いの〜?」

途端に、リュカが慌てる。
大きな手が何度か空を泳ぎ、恐る恐るといった風に頬に伸ばされる。
指が触れて、その濡れた感触で、自分がまた泣いていたことに気付いた。

「あ……ごめんね。大丈夫だよ。どこも痛くない」
「でも……くるみ、泣いてる〜」

そう言うリュカの表情こそ、泣きそうに歪む。
ちっとも困っていない苦笑を浮かべて、くるみはリュカにキスをする。

「大丈夫。これは、幸せで堪らない気持ちが涙になっただけだから」
「本当、に? 悲しく、ない〜?」

不安げに顔を覗き込むリュカの目に、心配と好き、を見つけて。
心の底から幸福で笑う。

「うん。嬉しくて仕方ないくらい幸せで、悲しいなんて思う理由、どこにもないよ」
「そっか……よかった、よかった〜」

ぎゅっと抱きしめる腕が温かくて、優しい。
頬に、額に、唇に。
雨のようにキスを降らせるリュカに、くすぐったいと声をあげて笑う。

「くるみが嬉しいと、僕も幸せ〜」
「私も。リュカと一緒」

そうやって戯れているうちに、リュカのキスが首筋や肩に降りてくる。
大きな手が、長い指が、段々と意図を持って白い肌を滑る。

「え、と……あの、リュカ? もう朝だし」

留めようとしたくるみを自分の下に横たえておいて、熱っぽくも純粋に見つめた。

「……ダメ?」

ダメなわけがない。
素直に首を横に振って、飽きることなく二人、溶け合う。


昼も夜も愛されたいと願った、いつかの自分にくるみは笑う。
こんなにも満たされて、溢れてしまうくらいに幸せだよ、と。