読書

静かな午後。
目で活字を追う。
ページをめくる。

パラリ。 パラリ。
他に何にも音がしない。 意識は文字を追いかける。 ページをめくる。
パラリ。 パラリ。
時計は見ない。 気付かない。 活字の海を漂う感覚。 気持ちよくて。
電話が鳴った。
もう少し。 このページを読み終わったら。
留守電になった。
もうちょっと。 この章が終わったら。
ふと、顔を上げる。 時間は…。
まだ大丈夫。
いつもの癖の独り言。 この時ばかりは臨時休業。 黙々と、ただ文章を追う。
この、自分を忘れる感覚が好き。
自分じゃない自分を探す。 まるで旅をしているみたい。
読み耽る。 浸る。
少し、暗くなった。 顔を上げる。 時間は…。
「…あー…」
現実に戻される。 読みかけの本。 しおりを挟んで閉じた。 名残惜しいけど。 また、後で。
着信履歴に渋い表情。 またやっちゃった。
今日の晩ご飯は、チャーハンにしよう。