「行き違いの恋」

作:あやどりみつき 2019/09/14
氷雨:19 七生:19

七生(ななお)
氷雨と幼馴染の少年。少し運動神経も感情にも鈍い。

氷雨(ひさめ)
七生と幼馴染の少女。運動神経良く若干男勝りだった。



氷雨「なんでナオってばいつもそんなどんくさいんだよ」
七生「ヒサが早すぎるだけだって」
氷雨「普通でしょー。絶対ナオがどんくさいんだって」
七生「俺の方が普通だし」

氷雨「――あたしたちは中学時代、最高に仲のいい二人だった」
七生「――ずっと最高に仲良くいられると、疑いもせず思ってた」

氷雨「あ、いたいた。ナーオ……」
七生「え、ヒサのこと?うーん、男友達みたいなもんだからなあ」
氷雨「なーに話してんだよ、ナオ」
七生「え?ってヒサか……別に、なんでも」

氷雨「――中学卒業目前。他の男子と話してるのを聞いたから」
七生「――その日から、ヒサと疎遠になった」

氷雨「好きな人がいるから、ごめんなさい」
氷雨「――高校生になって、告白とかされるようになったけど。ナオのことが、あたしは今でも」

七生「恋愛に興味ないのかって、そんなわけないじゃん」
七生「――ただ、ヒサ以上に好きになれる相手に出会えないだけで」

氷雨・七生「「あ」」

氷雨「ナオ……元気そう、だね」
七生「ヒサも……」

氷雨「――久しぶりに会って、前以上に好きだって思ってしまった」
七生「――久しぶりに会って、これが恋なんだって気付いた。だから」

氷雨「それじゃ、あたし行くね」
七生「待って、ヒサ!」
氷雨「……何?」
七生「今、さ。付き合ってる相手とか、いる?」
氷雨「いない、けど……いいじゃん、どうでも」
七生「良くない!いないなら、俺と付き合ってよ」
氷雨「……え?」
七生「ヒサ、氷雨のことが好きなんだ」
氷雨「……うそ、だ。だって、男友達みたいって」
七生「聞いてたんだ……。けど、今更だけど気付いたんだよ!氷雨が特別なんだって」
氷雨「……夢、じゃない?」
七生「現実だよ」
氷雨「嬉しい……よ。あの時失恋したと思ってたのに、この恋が実るなんて、思ってもいなかった」
七生「それって」
氷雨「ずっと、ナオのことが好きだった。今も、好き」
七生「俺の方こそ、夢みたいだ!好きだよ、氷雨」