「正義の味方が到着するまで」

作:あやどりみつき 2019/09/14
人質:10 犯人:10


犯人
ある青年に敵対する組織に属する男性。青年の恋人である少女を人質にとっている。

人質
犯人が敵対している青年の恋人である少女。青年を信じ、気丈に振舞っている。



人質「どうして、どうしてこんなことをするの!彼があなたに何をしたって言うの?」
犯人「私自身が彼に個人的恨みを持っている訳ではありません。
   ただ、彼は我々に敵対する存在……邪魔者なんです」
人質「だったら、どうして私を生かしているの?警告のつもりなんでしょう」
犯人「ただ殺しては意味がないからですよ。
   彼が二度と我々に敵対しようと思わないくらいに、心身ともに痛めつけなければ」
人質「そんなことをしても無駄なんだから。彼はあなたたちなんかに屈しない」
犯人「どうでしょうね?大切な恋人を敵の手に委ねて、それでも折れずにいられるでしょうか」
人質「私は彼を信じてる」
犯人「貴女が彼を信じていても、彼は我々を決して信じられない」
人質「それでも」
犯人「それとも貴女には、我々の手から脱出できる秘策でもおありですか?」
人質「……それは、」
犯人「ないのは存じておりますよ。ご心配なく」
人質「嫌味かしら」
犯人「そう聞こえましたか?他意はございませんよ」
人質「どうせ、あなたのその偉そうな態度も彼がここに辿り着くまでのもの」
犯人「そうですね。そうかも知れませんが、その時貴女がご無事かどうかは、我々の心ひとつなのですよ?」
人質「私はどうなったって、彼が無事ならそれでいいのよ」
犯人「これは、健気な言葉ですね。彼にも是非聞かせて差し上げたかった」
人質「ふん、精々首を洗ってなさい。彼が絶対に、あなたたちを許しはしないのだから」
犯人「ええ……それまで彼には精々張り切って踊って貰いましょう。
   貴女がここに居る限り、そうするしかないのですから、ね」