「妹の心兄知らず」

作:あやどりみつき 2019/09/14
陽菜:11 朝陽:11

朝陽(あさひ)
大学卒業後新社会人になったばかりの兄。

陽菜(ひな)
中学生の年の離れた妹。



陽菜「お兄ちゃん、おかえりなさい!遅くまでお疲れさま」
朝陽「ただいま、いつも待たせてごめんな」
陽菜「ううん、お兄ちゃんがんばってるの知ってるもん。あたし平気だよ」
朝陽「でも、先に飯食ったりしてていいんだぞ?」
陽菜「一緒がいいの。お母さんがいた頃は、みんな一緒にご飯食べてたもん」
朝陽「寂しい、よな。ごめん」
陽菜「あ、ううん!そういうんじゃないの、大丈夫だよ!」
朝陽「家事とか、しんどくないか?」
陽菜「お母さんみたいには出来ないけど、あたし家事は苦手じゃないし、何ならちょっと楽しいくらい!」
朝陽「あんま強がらなくていいんだぞ、陽菜」
陽菜「本当だよ。そりゃ、全然寂しくない訳じゃないけど……でも、お兄ちゃんもいるし、友達もいるし」
朝陽「母さんが亡くなって、父さんは単身赴任。俺は仕事で帰り遅いし、一人にして……本当、ごめんな」
陽菜「やだな、謝らないでよ。お兄ちゃんの所為じゃないでしょ」
朝陽「けど」
陽菜「けどもでももないの!そんなにお兄ちゃんが気にするなら、ちゃんと我儘もいうから」
朝陽「我儘?例えば何言うんだ?俺にできることにしてくれよ」
陽菜「んー、笑っちゃだめだよ?……今日、一緒に寝て」
朝陽「え」
陽菜「お兄ちゃんに拒否権はありません!ぎゅーして寝てくれなきゃ、許さないからね」
朝陽「わ、わかったよ。……やっぱ寂しいんじゃないか」
陽菜「うん……心配させまいとする健気な妹の気遣いを、わかってよ。お兄ちゃんのばか」
朝陽「悪いな」