「最期の願い」

作:あやどりみつき 2019/09/14
アレス:11 ティナ:10

アレス
姫を守る青年騎士。

ティナ
王国の最期の生き残りの姫。



アレス「姫、間もなく城壁が落ちます。敵が城へ押し寄せる前に、お逃げください!」
ティナ「逃げるのならば、あなたも一緒に」
アレス「なりません。私はここで少しでも敵を足止めします」
ティナ「そんな……私を一人にすると言うのですか?」
アレス「お許しください。姫が無事逃げられる可能性を、少しでも高める為です」
ティナ「いいえ、いいえ私は嫌です!此処に残ったあなたと、生きて再会できないことなど、幼子でもわかることです」
アレス「お聞き分けください。私の代わりになる騎士はいくらでもおりましょうが、姫の代わりはおりません」
ティナ「私はあなたが大切なのです。どうしてわかってくれないの」
アレス「貴女をお守りすることが、私の役目であり、私の願いでもあるのです。どうか、どうかこの願いをお聞き届けください」
ティナ「嫌、です。あなたが好きなの」
アレス「……勿体ないお言葉。ですが、元より身分違いの叶わぬ想いでした」
ティナ「一緒に逃げて。身分も何もかも捨てて、二人で生きていきたいの」
アレス「それは、夢のような話ですね」
ティナ「ええ、きっと幸せだわ」
アレス「ですが、それでは姫を最後の砦と今戦っている我が同志たちの思いはどうなります?」
ティナ「それは……」
アレス「王を失い、王族ただ一人の生き残りとなる姫が、我らの国を再興してくださると、信じている者たちです」
ティナ「……幸福を、ささやかな一人の娘としての幸せを願ってはいけないというの?」
アレス「…………お許しを。姫、お慕いしておりました」
ティナ「アレス……っ!?」
アレス「貴女が生きていてくれるなら、本当は、それだけでいい。どうか、無事で。ティナ」