「物語未満」

作:あやどりみつき 2019/09/11
真昼:12 時雨:12


蒼井時雨(あおいしぐれ)
高校二年生。文芸部所属のインドア少年。

青井真昼(あおいまひる)
高校二年生。部活無所属の明るい少女。


真昼「や、部活おつかれさま。時雨くん」
時雨「あ……えっと、まだ残ってたんだ」
真昼「うん。だって時雨くん待ってたから」
時雨「……そう、なんだ」
真昼「やだなあ、これが初めてってわけでもないのに、どうしたの?」
時雨「どうして、いつも僕のこと待っていてくれるの?」
真昼「時雨くんと一緒に帰りたいから、だよ」
時雨「どうして、僕と?」
真昼「うーん、どうしてかなあ。……やっぱり時雨くんと一緒にいると楽しいから、じゃないかな!」
時雨「楽しい……かな」
真昼「楽しいよ!時雨くん、色んなこと知ってるし。話してて楽しい」
時雨「でも、僕は話すの上手くないし……それに、僕じゃなくても、君には友達沢山いるし」
真昼「うん。友達は沢山いるよ。だけど、時雨くんがいいの」
時雨「……僕が、いい?」
真昼「そう。……ところでさ、時雨くんはいつになったら私のこと、ちゃんと呼んでくれるのかな?」
時雨「え、ええっと……それは……」
真昼「同じ苗字なんだから、名前でいいよって最初に隣の席になったときに言ったじゃん?」
時雨「そうだけど……」
真昼「ねえ、蒼井時雨くん。たまにはちゃんと、私のこと呼んでよ。君とかじゃなくて」
時雨「……真昼、さん」
真昼「うん!それじゃ、帰ろっか」
時雨「あ……う、うん」

真昼「これは、私と彼の、未だ始まらない物語」
時雨「いつ始まるのか、始まらないのかも、まだわからない物語」