「北校舎の、階段の怪談」

作:あやどりみつき 2019/08/24
映子:14 日和:11

映子(えいこ)
去年、友達が行方不明になってしまったけれど、そのことを忘れてしまった少女。

日和(ひより)
怪談の被害者になって一人で寂しかった少女。


映子(――北校舎の下駄箱を左に進むと、階段の前に、大きな大きな鏡がある)
日和(――その鏡の上には、大きな丸い時計がある。ピエロがおどけている絵が精緻に描かれた、不気味な時計)
映子(――一時間ごとに、音楽を鳴らして、時計の一番上の扉から数体のピエロが踊りながら出入りするという、仕掛け時計だった)


日和「あのね、今日は北校舎の掃除当番なんだ。だから、絶対先に帰らないでね?」
映子「うん。待ってる」

映子(だけど、いつまで待っても彼女は教室に戻ってこなかった。私は心配になって、北校舎に探しにいくことにした)

日和「映子ちゃん、迎えに来てくれたんだ。ありがとう。でもね、あと階段の掃除が終わってないの」
映子「そっか、じゃあ手伝うよ。二人でやればすぐ終わるでしょ?」
日和「ありがとう」

映子(箒で、階段の上から掃いていく)

日和「あ、ちょっと待ってて。ちり取り置いてきちゃったから、取ってくるよ」
映子「え、それなら一緒に……って、行っちゃった」

映子「ここの鏡って、確か怖い話があったよね」

日和(――仕掛け時計の音楽が鳴り始める)
映子「え、ピエロが、笑ってる……?」

映子「いや、いや、離して……っ!」

日和「待ってたよ、映子ちゃん」
映子「え、日和ちゃん……どういう、こと?」
日和「私が去年、行方不明になったの、やっぱり忘れちゃってたんだね」

映子「え……あっ!」
日和「これでもう、映子ちゃんも一緒。この鏡の中で、ずっと、一緒だよ」

映子(――4時ちょうどに、階段の4段目に立って、ピエロの踊りを見たら)
日和(――鏡に引きずり込まれて、二度と出られない)

映子(これはそんな)
日和(ある、学校の怪談)

SPOON【声劇】北校舎の階段の怪談 映子:稲村 璃々香 日和:あやどりみつき