「灯火に導かれて」

作:あやどりみつき 2018/12/07
A:11 B:11



A「ただいま。……逢いたかった」
B「私だって、逢いたかったよ。ずっと、ずっと想ってた」
A「うん、知ってる」
B「ずっと、ずっと一緒に居たいよ」
A「そうだね、僕もだよ。叶うことなら、もう2度と、君を1人にしたくない」
B「じゃあ1人にしないでよ。もう、離れないで。一緒に居てよ」
A「ごめん。出来ることなら僕もそうしたい。でも、出来ないんだ」
B「知ってるよ。わかってるよ。あなたがこのランタンに導かれて還ってきているってことくらい」
A「うん。本当に……ごめん」
B「謝らなくていいよ。仕方ない、仕方ないんだって……わかってる」
A「でも、泣いてる。僕の所為で」
B「そんなこと……」
A「もう、忘れていいんだよ? 僕のことを毎年こうして迎えてくれなくて、いい」
B「やめて! あなたにそんなこと言われたくない!」
A「それじゃあ君は、これからもこうして頼りないランタンの灯りだけを頼りに生きていくつもり?
  もう死んでしまった僕に、年に一度逢うだけの、悲しい生き方を。するつもり?」
B「ダメ……なの? 私はもう、あなたを想っていては、いけないの?」
A「嬉しいさ。君の心にいつまでも僕が生きているようで、嬉しいと、思ってしまう。
  だけど、このランタン祭りは別れのための祭りなんだ。生者が死者に別れを告げるための。
  僕達の逢瀬は、間違っている」
B「あなたが言ったのよ? 私に、死ぬなって。この逢瀬はその対価。間違いも正しいも、関係ない!」
A「そう、だね。そうだったね。……愛しているよ、死してなお」
B「私も、あなたを愛してる。例え世界が歪もうと、私は死ぬまであなただけを愛してる」
A(歪めてしまった愛情は、僕らを何処へ導くのだろう)
B(ゆらゆら揺れる灯火だけが、私とあなたを繋いでくれる)

SPOON【声劇】灯火に導かれて あやどりみつき(一人二役)