「魔族と人間の平行線」

作:あやどりみつき 2009/10/03
人間:13 魔族:13


人間「やっと、やっとここまで辿り着いた……ずっとてめぇに会いたかったぜ!」
魔族「騒々しいと思えば……なるほど、人間か。懲りもせずに、よく来るものだ」
人間「てめぇに返したい恨みがあるんでね!」
魔族「恨み……? さて、心当たりはないが」
人間「十年前! てめぇは一つの村を滅ぼした……俺の生まれ育った村を。
   そして……俺の家族を、食い殺したんだ!」
魔族「……ふむ」
人間「思い出したかよ!?」
魔族「いいや、さっぱりだな」
人間「何だとっ」
魔族「では問おう。人間よ。お前は十年前の食事の内容を、覚えているか?
   食材のひとつひとつを、思い出すことができるか?」
人間「そんな話、関係ねぇだろうが!」
魔族「あるよ。私にとって、つまりそういうことなのだから」
人間「……食事、だと」
魔族「ああ、そうだ。そもそも魔族とはそういう生き物だ。そして、食わねば生きられぬ。
   人間と何が違う?食事をしたことを責められても困る」
人間「てめぇ……っ!」
魔族「人間も肉を食う。牛や豚は殺してもよくて、何故人間を殺してはいけない?」
人間「家畜と人間は違う!!」
魔族「同じだよ。少なくとも、我らにとっては」
人間「人間には情がある!肉親が殺されれば悲しみ、恨みもする!」
魔族「家畜に情はない、と?誰が決めた。確かめた者はいるのか?」
人間「そ、それは……」
魔族「剣を引け。幸い私は空腹を感じていない。今ならば、生かして帰してやる」
人間「くそ……はいそうですかとおめおめ帰れるかよ!
   あの時も、てめぇはそう言って俺だけ生かした……同じ屈辱を二度も味わうのはごめんだ!」
魔族「……やはり言葉を尽くしたところで、理解できるものではない、か。残念だ」
人間「俺みたいな思いをする人間がいなくなるように……そして、俺の恨みを晴らすためにも。今、ここで……死んでもらうぜ!」
魔族「やれやれ……致し方ない」