「涙雪」

ふわり、ふわり

空から零れる白い泡。 懐かしくて、優しい景色。

ひらり、ひらり
舞い散る白い記憶の残滓。 美しくて、悲しい景色。

「   」
無音の世界。 白黒の視界。

儚い白、その名は雪。
差し出した手のひらに、形を留めることはない。 ただ、目に優しく過ぎてゆく。

切ない白、その名は思い出。
閉じた瞼の裏に、同じ場面を繰り返す。 ただ、胸に甘く映るだけ。

「   」
呼ぶ声を飲み込んで静寂を重ねる。
冷たく、美しく。 儚くも、残酷な。 記憶の情景。

はらり、はらり
地に昇る涙雪。 冷たい頬を伝うぬくもり。