「君がいるから」

積み重なった落ち葉の山を、両手で掬い、ばら撒いた。

さらさら、かさかさ。 枯葉の音色。
君が、嬉しそうに笑った。

夕陽が差して、赤や黄色の朽葉が透ける。
きらきら、はらはら。 光る秋色。
君が、子供のように無邪気に踊る。

 行かないで。
怖くなって、僕は君を抱きしめた。
秋風、紅葉。 彼女を連れて行かないで。
腕の中で、君が笑う。

「大丈夫だよ、行かないよ」

触れた手のひら。 愛しい温もり。
秋の奏でる音色より、 秋が染める色よりも、
美しいのは、君の声。 鮮やかなのは、君の唇。

「ずっと、あなたと一緒にいるよ」

秋を好きだと、初めて思えた。