今はまだ 遠い夢

見渡せば 鈴蘭の草原

近くて遠い 遥かな青空

軽くなる心
何にも縛られない

完全な自由

駆け出せば 飛べそうな気がした


鈴蘭を揺らす風と共に
飛び立とうと踏み出した


その瞬間


呼ぶ声が聞こえた
それは悲痛な願い

頬に落ちた雨
その一粒ごとに

軽かった心と身体が重くなっていく

手にした自由が恋しかった

けれど

僕を呼ぶ少女の声
それ以上に恋しいものはないと思い出した


重さに引かれるまま
やがて僕は 暗闇へと落ちていった



「わたしを遺して逝かないで!」



歌にも聴いた切なる願い
頬に落ちる温かい雨

重い身体
ようやく瞼を上げた

「泣かないで。僕はどこへも行かないよ」


少女の涙に縛られて
僕はまだ逝くことは出来ない


「今、僕は、遠い未来の夢を見ていたよ」